2022年2月19日土曜日

冬のスポーツの物理5:スノーボードクロス バンピング

 スノーボードクロスやスキークロスの技術にバンピングというのがある。コース上のウェーブという波打ったところで加速する技術だ。ウェーブはコースが波打っているが全体では緩斜面になっている。原理的にはコースに傾斜がなくても加速できる。この仕組みを考えてみよう。



原理はフィギュアスケートのスピンと同じだ。スピンでは腕をたたんだが,スノボクロスでは代わりにウエーブの底で立ち上がることによって加速している。スピンのところで話した角運動量保存保存則より,続回転速度を速くするにはで計算した心力に逆らってした仕事が速度に転嫁された,という方が直感にあっているかもしれない。とにもかくにも,速度が大きいウエーブの底で立ち上がるのがコツだ。その後ウエーブを上ると速度が落ちるがウェーブの底で加速したぶんだけ速度がましている。2番目の頂点では素早くしゃがみ込む。すると,次のそこでもう一度立ち上がって加速することができる。後述するようにウェーブの頂点でしゃがみ込むときに速度は変化しない。選手はこれを繰り返して加速しているのだ。いくらでも加速できるわけではない。頂点での速度が速すぎると板が浮いて(ジャンプして)しまい,次のウェーブでの加速にうまくつながらない。


計算してみよう。(高校3年生レベルの物理かな)

コースのモデルとして図のような半径$R$の円弧が組み合わさったものを考えよう。ウェーブの頂点と谷の高さの差$H$とする。最初の頂点で選手は止まっていたする。選手の体重(質量)を$m$,重力加速度を$g$とすると,滑りおりた底での速度$v_1$は力学的エネルギー保存則から

$\frac{1}{2}mv_1^2=mgH$

$v_1=\sqrt{2gH}$    

となる。ウェーブの底で立ち上がることによって,選手の重心が$h$だけ高くなったとする。これは選手の回転の半径が$R$から$R-h$に変化したことになる。立ち上がった後の速度を$v_h$と書くと,続回転速度を速くするにはの(1)式で$v_{R_0}$を$v_1$,$R_0$を$R$,$R_1$を$R-h$に置き換えれば求まる。

$v_h=\frac{R}{R-h}v_1=\frac{R}{R-h}\sqrt{2gH}$

次のウェーブの頂点での速度を$v_2$として力学的エネルギー保存則を考えると

$\frac{1}{2}mv_2^2=\frac{1}{2}mv_h^2-mgH$

$v_2^2=v_h^2-2gH=\frac{R^2}{(R-h)^2}2gH-2gH=2(\frac{R^2}{(R-h)^2}-1)gH$

$v_2$が正になるのはすぐにわかるだろう($1<\frac{R}{R-h}$)。2番目の頂点では速度が増えたわけだ。

 次に2番目の頂点でしゃがみ込むのだが,これは重心が重力中で落下しているだけなので滑走速度は変わらない*。逆に重心の落下より速くしゃがんでしまうと足が雪面から浮いてしまう。

ウェーブの頂点で選手を下向きに引っ張っている力は重力$mg$だ。ウェーブの頂点で斜面にそって滑っている選手は半径$R$の円運動をしている。このとき選手が感じる遠心力は$m\frac{v_2^2}{R}$になる。これが重力より大きくなると,選手は雪面から離れてしまい,頂点でジャンプしてしまい次のウェーブでうまく加速できない。選手はこれを調整しながらこバンピングしているわけだ。

具体的な数値はどれくらいなのだろう。コース設計の情報はわからないが,

$H=1.5m$ 人の背丈より少し低いくらい。

$R=5m$   動画を見た感じ?

$h=0.5m$ しゃがんだ姿勢と立った姿勢で人の重心の位置がこれくらい変わる?

これらを使って計算すると

$v_1 \approx 5.4 m/s$

$v_h \approx 6.0 m/s$

$v_2 \approx 2.6 m/s$

1回バンピングすると,速度が$2.6m/s$増えるという結果になった。それらしい数字だろうか?またこの割合でバンピングを繰り返すと3回目には足が雪面を離れてしまうので,調整しなければならないという結果になった。それらしい??

*もし選手の足が雪面から離れないような工夫をして(たとえばレールの上に足を固定して滑るとか)力を使って落下速度より速くしゃがめば加速できるが,,,


おまけ

 バンピンングと同じ原理は他の競技や遊具にも使われている。

ブランコの立ち漕ぎはバンピンングの原理そのままだ。ブランコを前後に振ったところでしゃがみ込み、最下点で立ち上がる。座り漕ぎの場合はあまり目立たないが原理は同じだ。後に振ったところで足を曲げ、最下点から前に振り上げるあたりで足を伸ばす。これによって重心の位置を上げている。さらに体全体を後ろに反ることによってより重心を高くしている。立ち漕ぎの場合も屈伸をする代わりに、最下点を通って前方へ振り出すところで後ろに反るようにして足を前に出す動作で漕ぐこともできる。

もう一つの例は、鉄棒の大車輪。鉄棒の上から体を振り下ろすときは、体を後ろに反り気味にしておいて、最下点から前に振り上げる時に足を前に出して体を曲げる。この動作で重心を持ち上げている。大車輪の映像を見るとこの時回転の速度が上がっているのがわかる。この動作は体操用語で「あふり」と言うそうだ。原理はバンピンングやブランコと同じだ。


1 件のコメント:

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