2022年2月17日木曜日

冬のスポーツの物理3:続回転速度を速くするには

 これは,冬のスポーツと物理1:フィギュアスケートのスピンの続き。

計算ばかりなので,興味ない方はスキップしてください。(^^;)

前回の後半で,角運動量保存則を利用してスピンを早くすると,回転のエネルギーは増えることを言いました。実際に計算してみよう。内容は大学初年程度の物理になります。



まず,質量$m$の質点が半径$R_0$で回転しているとします。質点の速度を$v_{R_0}$としましょう。このとき角運動量は$運動量×回転半径$となります。なので角運動量$h$は

$h=mR_0v_{R_0}$

運動エネルギーを$E_{R_0}$と書くと

$E_{R_0} = \frac{1}{2}mv_{R_0}^2$

です。

次にこの質点の回転半径が$R_1(<R_0)$になって,速度も$v_{R_1}$なったとします。角運動量が保存していると,

$mR_1v_{R_1} = mR_0v_{R_0}$

なので,

$v_{R_1} = \frac{R_0}{R_1}v_{R_0}$      (1)

となります。このとき,運動エネルギーを$E_{R_1}$と書くと

$E_{R_1} = \frac{1}{2}mv_{R_1}^2=\frac{1}{2}m\frac{R_0^2}{R_1^2}v_{R_0}^2$   (2)

$R_1<R_0$なので運動エネルギーは$\left(\frac{R_0}{R_1}\right)^2$倍になっています。

運動エネルギーの差は

$E_{R_1}-E_{R_0}=\frac{1}{2}m(\frac{R_0^2}{R_1^2}-1)v_{R_0}^2$ (3)


次に質点に働く力から質点の回転半径を変化させるために必要なエネルギーを計算しましょう。

半径$r$ ($R_1 < r < R_0$)のときの質点の速度$v(r)$は(1)から

$v(r)  = \frac{R_0}{r}v_{R_0}$

このとき,質点を回転させるために必要な力(向心力と言います,遠心力と反対向きで大きさは同じ)は

$F(r)  = -m\frac{v(r)^2}{r} = - m\frac{R_0^2}{r^3}v_{R_0}^2$

です。負号は回転中心方向に引っ張る力という意味を表しています(このあたりをちゃんとやるには極座標の知識が必要になります)。

この力が働いているとき,質点の回転半径を$R_0$から$R_1$まで変化させる(質点を引っ張ることになります)ために必要な仕事を計算します。

$ W = \int_{R_0}^{R_1} F(r) dr = -mR_0^2v_{R_0}^2\int_{R_0}^{R_1} \frac{1}{r^3} dr = -\frac{1}{2}mR_0^2v_{R_0}^2\left[-\frac{1}{r^2}\right]_{R_0}^{R_1}$

$= \frac{1}{2}mR_0^2v_{R_0}^2\left[\frac{1}{R_1^2}-\frac{1}{R_0^2}\right]=\frac{1}{2}mv_{R_0}^2\left[\frac{R_0^2}{R_1^2}-1\right]$

予想通り(3)と同じ結果になりました。


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