冬のスポートの物理についていくつか調べていて,スケートやスキーが滑る理由はどうなっているのだろう。よく分かっていないという話を聞いた記憶があるけど。。
少し調べたのだが,これは,,,禁断のネタだった。。。とても難しく,今でも解決しているのかどうか分からない。
以前はこんな説があった。
1)圧力融解説。
圧力をかけると氷がとけてスケートの刃と氷の間の水が潤滑剤になるという説。しかし人がかける圧力は小さすぎとか,この説では説明できない低温でも氷の上は滑るなど。現在では否定されている。
2)摩擦融解説
スケートの刃と氷の間の摩擦で氷がとけて滑るというせつ。しかし,滑りやすいと摩擦は小さくなって氷が溶けにくくなるという矛盾がある。
少し調べてみると2021年にこのことについての論文が2本見つかった。どちらもPhysical Review Xという有名な論文誌に掲載されているのだが,この2つ違うことを言っているように見える。ちょっと紹介してみよう。
1つはNanoreollogy of Interfacial Water during Ice Gliding(氷滑走における表面水のなのレオロジー)*
レオロジーというのは日本語で流動学。物体の変形や流れの研究分野。
この論文は氷と物体との間にある水(Interfacial Water)の特性を調べている。その結果,氷の物体の水は普通の水とは性質が大きく違う粘性を持っていると結論している。つまり油のような性質をもっているということだ。氷が滑るのは氷と物体の間に油があるような状況ということのようだ。この粘性は温度とともに代わり,もっとも滑りやすいのは-10℃くらいと言っている。
もう1つはFriction on Ice: How Temperature, Pressure, and Speed Control the Slipperness of Ice (氷上の摩擦:温度,圧力,速度がどのように氷の滑りやすさに関係するか)**
この論文は氷の摩擦係数を温度,圧力,スピードを変えたいろいろな条件で調べて,それと分子運動学の計算を比較している。その結果から,
「氷の内部は分子同士がしっかり結合した結晶だが,表面には動きやすい水分子が存在する。そのおかげで氷は滑りやすい。」
という説だ。この効果は氷の温度が低いと小さくなり高いと大きくなる。なので温度は高い方が良いのだが,温度が融解点(0℃)に近づくと氷の表面が削れら足りして変形しやすくなって,摩擦は大きくなる。彼らの研究では-6℃くらいが最も滑りやすいとなっている。
実際のスピードスケートで使われる-5℃くらいの氷温の摩擦はどちらの論文も同程度の結果のようだ。一方は摩擦に関与する潤滑水の性質を直接調べたもの,一方は摩擦の測定と計算の比較なので違う手法なのだが,2つは同じことを言っているのだろうか?
同じことを違う側面から見ているような気もするが,専門外の論文なのでよくワカライ。。。
* Physical Review X 11, 011025(2021)
**Physical Review X 9, 041025 (2019)
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