2022年2月16日水曜日

冬のスポーツと物理1:フィギュアスケートのスピン

北京冬季オリンピックも後半に入った。オリンピック競技と物理の関係を書いてみる。

その第1弾。

「フィギュアスケートのスピンで,始め腕を大きく広げてスピンをして,そのあと腕を体の方に畳むと回転が速くなるのは角運動量保存則の結果」というのは物理の授業あるあるとして(一部では?)有名な話。

角運動量というのは

角運動量=慣性モーメント×回転の速度

で定義される量だ。

回転の速度は1秒間に何回転と考えて差し支えない(物理業界では1秒間の回転数×2πだが気にしないことにする)。

慣性モーメントは物体の回転のしやすさ/しにくさを表す量。これが大きいと回転しにくい(回転しているものはとまりにくい)。質量が同じでも回転半径が大きいと大きくなる。例えば質量が同じ輪(円環)でも半径の大きな輪の方が回転を与えにくく,逆に回っている輪はとまりにくい。

この角運動量が運動中変わらないというのが運動量保存則だ。フィギュアスケートのスピンではこればほぼ成り立っている。例えば腕をひろげた状態と畳んだ状態で慣性モーメントが2倍違うと回転の速度も2倍違うことになる。

実際はどうなのだろう。人の体型はとても複雑なので簡単なモデルで考えてみる。

図のように,人を体重(腕も合わせて)60kg,体の形は半径20cmの円筒とする。この円筒から長さ60cmの円筒形の腕がでている(円筒の中心から測ると80cm)。腕の重さはそれぞれ3kgとしよう(腕の重さは上腕,下腕,手を合わせて体重の5%くらいだそうだ)。腕を畳んだ状態では半径20cmの円筒形になる。

 この形で腕を伸ばした状態の慣性モーメントを計算してみると約1.2[kg m^2]となった。腕を畳んだ状態では約2.8[kg m^2]。つまり腕を伸ばした状態とたたんだ状態で慣性モーメントは2.3倍違う。角運動量保存則を当てはめると腕を伸ばしたときと畳んだときで回転のスピードが2.3倍!になるという結果だ。

 ところで角運動量は変わらないが,回転のエネルギーは腕を広げたときよりも畳んで早く回転しているときの方が大きくなってる。腕は遠心力で広がろうとするのでそれに逆らって畳んむために力を使って腕を引っ張りこまなければならない。そのとき腕の力を使って行った仕事(エネルギー)が回転のエネルギーに転嫁したと考えることができる(エネルギー保存則!)この部分,こちらで大真面目?に計算してみました。

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