2013年3月29日金曜日

物理学科でe-Learning。予告編


昨年の4月に 「WebCTをつかってみた」という記事を書きました。WebCT(もっと一般的にe-Learning)を使って何をしようとしたのかは、そちらを読んで頂けるとうれしいです。

さて,「どうしてe-Learningか」について、前回は書かなかった理由があります。実は、こちらの方が大きかったのです。
e-Learningを授業に導入した事例は、たくさんあります。でもほとんどが,「物理を専門としない学生のための基礎」と言う位置づけ、ではないでしょうか。そこでは、「分かりやすく,直感的に理解できるような授業や、教員側が学生に能動的な、学びの機会を提供する」事が、適していると思います。しかし,今考えているのは,物理の専門教育なのです。将来「研究職や、高度な専門性を必要とする職に就く、ことができるようになる」ための物理の授業です。そこに、「分かりやすく直感的に理解しやすい授業」、は適しているでしょうか?
物理に限らず、最も勉強になるのは、自ら試行錯誤しながら理解を深めて行く過程、だと思います。学び方そのものを見つけることも、非常に(もしかしたらこちらの方がより)重要です。自分でイメージを膨らませ、想像するのです。WebCTや視覚教材を使った、直感的に理解しやすく分かりやすい授業(言い換えると親切過ぎる授業)は、この、真に重要とも言える段階を奪ってしまう、ことになりかねないのです。「専門基礎としての授業は、あえて不親切にすべき。換言すると、それ以上のことは出来ない」は正しいと思うのです。
それでも、あえてe-Learningを試すのは、そうは言っても、どうしていいか分からない受講生は、少なくない、という現実があるのは確かです。でもそれだけではありません。専門教育にも、e-Learningが有効利用できるのではないか、と思ったからです。

今年度、研究室の卒業研究生や、情報メディアセンターの先生方と、試行錯誤しながら、WebCTで行った演習の解析や、視覚教材の開発をやってきました。初めての試みでしたが、いくつか来年度の授業に生せそうな事、が分かりました。二人の学生さんが、卒業研究としてまとめてくれた結果を、来週広島大学で開催される、物理学会で話します。今、話の中身を考えているところです。学会が終わったら、ここでも紹介しようと思います。

続編 「物理学科でe-Learning。報告編」 です。


 

物理学科でe-Learning。報告編

以前,「物理学科でe-Learning。予告編」というお話をしました。その時に書いた通り,先日日本物理学会の物理教育セッションで報告しました。

下を向いていますね。iPadでカーソルを操作しています。
その時の様子です。物理教育セッションで話すの全くの初めて,緊張するほど初々しくはないですが,どのような雰囲気か始めは様子をうかがっていました。やはり,素粒子実験とは雰囲気が違います。違うと言っても,皆さん優しいんですね。素粒子実験のように,口調からして厳しいやりとりは皆無です。そもそも,質問者はまず立ち上がって名乗るし,,素粒子実験や理論の領域ではまず考えられない。
 それで,安心?して講演に望みました。とは言っても全くの新参者。講演内容も大学の専門教育に関することですので,他の皆さんとは毛色が違います。

まずe-Learningを専門科目に導入する際の考え方を話しました。その後,卒業研究で二人の学生さんが頑張ってくれた内容を元に,webを使った演習の様子や,視覚教材の作成状況を報告しました。
質疑ではまず,やったことの評価に関する質問がでました。これは難しいですね。何をもって成果がでた,とすれば良いのか。近視眼的な筆記試験の結果だけでは十分では無いでしょう。今後の課題です。この質問をして下さった方,10年以上前に一緒に実験をやったことのある方でした。思わぬところで再開です。講演後,「こんなところで会うとは」と言ったら「それは,こちらの台詞」と返されてしまいました。
その他には,「e-Leaningの長所,短所をちゃんと認識しているのであれば,問題無い。今後もどんどん進めてるように」 という,力強い励ましもいただきました。続けるのは,なかなかしんどいと言うことも分かってくれたうえで,です。この授業は前期開講なので,実は新学期はすぐそこに迫っているのです。準備を始めなければ行けませんね。

ところで,講演はKeyenoteを使ってiPadでやりました。これは結構便利なのですが,接続ケーブルがぬけやすいので気を遣います。それと上の写真を見てもわかるように,iPadの画面を見ている間はどうしてもうつむいてしまいます。考えなければ。。

2013年3月28日木曜日

プランク衛星の余波

 宇宙背景放射観測の衛星プランクが最新の結果を発表しました。たとえばこちらをご覧下さい。
宇宙背景放射の観測については,長いことWMAPという衛星の結果が引用されていのですが,約10年ぶりに更新されたわけです。
最新結果によると ( )ないはWMAP

宇宙の年齢 138億年 (WMAPは137億年)

宇宙の組成については
  物質        4.9%  (WMAP 4.5%)
  暗黒物質     26.8% (WMAP 22.7%)
  暗黒エネルギー 68.3% (WMAP 72.8%)
と改訂されました。

さて,この違い,数字でみるだけでも結構かわりました。これまで,いろいろなところでお話したときに,使ってきた数字や図は当然,WMAPのものです。
 これまで使ってきたスライドに新しい数値を入れてみました。

WMAPのデータを使った宇宙の組成図
プランクのデータを使った宇宙の組成図


 右がWMAP,左がプランク衛星の結果を使ったものです。どうでしょう,結構違って見えますね。
この古い図を,いろいろなところで使っているのです。これからこの図を使った話をするときには,そのたびに書き換えたり,古い図を使っていないか確かめなければならないでしょうか。

新しいことが分かったのは大変良いことですが,身近なところで,別の問題が現れました。

2013年3月19日火曜日

文房具の話ーデジモノ編その1

 前回の筆記用具編に続いて,デジモノ編。これは範囲が広くて大変。机の周りを見渡して,デジタル文具と呼べそうなのは;
 文書管理        Evernote, Mendeley、、
 手書きメモ系          Goodnotes, Papers, Penultimate
 読書関係         GoodReader, kindle , iBooks, kinoppy,,,,,,,,,,
 クラウド系のソフト    Sugarsync, DropBox, SkyDrive,,
 デジタル連携ノート    ShotNote, Shotdocs, CamiApp, Kyber Smartnote,,,
 スタイラスペン
 といったところか。これは一度では書き切れないね。それにほとんどクラウドなので,クラウド系というのは適切な分類とは言えないし。

 それはともかく,最近一番試しているのは,手書きメモ系。「手書きメモや絵をなんとかうまく整理したい」,「手書きの文書をストレス無くテキストにしたい」,といろいろ試している。iPadを使い始めて,手書きを直接デジタル化できるようになったので,特にその傾向が強まった。お絵かき系で一番よく使っているのはGoodNotes。これは紙のノート気分で書いていけるので重宝している。特に研究会などで、講演を聞きながらメモをとる時はこれを使うことが多い。ただ,OCRの機能は無い。
 OCRできるメモを探していたら,7notesというの見つかった。初めて使ったときは感動ものだった。手書きで好きなだけ書いた後に,まとめてテキストに変換できる。私の悪筆でもそこそこ(いやかなりの精度で)認識する。議事録にはうってつけ。会議中に書き殴っておいて,後からテキストにする。そのテキストはすぐにメールしたり,Evernoteに記録することができる。私の議事録がすぐにできるので,驚いた人もいるかもね。だが基本的に文字を書くためのソフトなので,絵を描くのにはあまり適していない。できないことはないが,ちょっと面倒。なので,絵と文が混ざるようなメモを取るときにはGoodNotesになる。あとは,iPadの手書きアプリで人気のPapersとかEvernoteと姉妹のPenultimateなどももっているが、今のところ上の二つで満足している。

 手書きのデジモノといえば,ノートに書いたメモを携帯で写真に撮ると補正して取り込んでくれる,ShoteNotesとかCamiAppが人気のようだ。私も飛びついて使っていたのだが,“ノートに書いて携帯で写真を撮る”,というのは結構手間がかかる。鮮明に撮ろうとして近づくと陰ができてしまう。(じつはこれが一番やっかい)。結局最近はご無沙汰気味。ノートは机の肥やしになりつつある。異色はKyber Smatnotes。ノート書いたメモを専用ソフトで写真にとると,数分後にテキストになって戻ってくる。OCR代がノートに含まれているのでちょっと高いしA6しかないが,初めて使った時は感動ものだった。OCRの精度も非常に高い。なんでも送られた手書きメモを人力でOCRして送り返しているらしい。すごいことを考えるものだ。でもこれもさっき書いた7Notesにとって代わられてしまった。あとノートが1冊残っているのだが,,,

後は、、、、 いや まだ最初に挙げたうちの二つ書いたところだ。これは終わりそうにない。別の機会に,,


2013年3月17日日曜日

文房具の話ー筆記用具編

 昨日テレビを見ていたら、文房具のランキングをやっていた。自分の使っているものが、上位にいたり、結構楽しませてもらった。自分の使っている文房具について書いてみよう。まずは筆記用具編。

ノートはあまり使わない。というか使わなくなった。ノートを持ち歩くのは必須だった。おなじみのCAMPUSノートや、ちょっと凝ってモレスキンを持ち歩いていた。でもiPadがほとんどの場面でノートに取って代わった。今はShotDocsという、デジタル連携できる薄いのを念のため持っているだけだ。

 今でも重要なのは、ペン。ノートをあまり使わないのになぜペンが重要か? 考え事をする時のメモや、計算に使う。レポート用紙にひたすら書き殴る。
(実は最近とても重要性を増している物に、iPadに書くためのスタイラスペンがあるのだが、それもデジモノ編で)
なので、ペンは軽く滑らかで、ストレスなく書き続けることが最も重要だ。万年筆はとても書きやすいが、“向き"があるので、気を使いたくない時はちょっと無理。以前はずっと水性ボールペンを使っていた。水性は書き味は良いが滲みやすい。油性は書き味がイマイチ。ゲルインクも出てきたがもう一息だった。その状況はJETSTREAMが発売されて一変した。油性だがとても軽く滑らかなだ。発売以来今でも愛用している。最近は滑らかさをうたったボールペンも増えてきて、選択肢が広がってきた。その中でもENERGEL(昨日のテレビでも上位にランクイン)という製品はなかなか良い。JETSTREAMは滑らかすぎると感じることがある。机の上など、硬いところに紙一枚をおいて書く時、滑りすぎてうまく書けない。例えば紙1枚にに署名するときだ。そのような機会は結構多い。もともと酷い悪筆なのでちょっと大変だ。ENERGELは、その点ちょうど良いかな。もうすこし使い込まないと結論は出ないけど。

署名に限らず、たまには丁寧に文字を書くこともある。その時は万年筆の出番。あまり使わないので良し悪しはわからないが、手頃なのでプレジールを使っている。この用途で昨日テレビで気になった筆ボールを今日文房具店で探したが見つからなかった。代わりと言うわけではないが、トラディオ プラマンと言うのを見つけた。試し書きをしてみるとなかなか良い。調べてみると、プラマンは発売から30年以上根強い人気を保つ名品のようだ。殴り書きにもちょっと丁寧に書く時も使えるかな。早速試してみよう。

2013年3月11日月曜日

英語の勉強?

最近いろいろ忙しくて、気づいたら一ヶ月以上更新していませんでした。何と前回のエントリーは、インフルエンザで寝込んだ話(^^;

さて、物理学会の年会が近づいてきました。今度の学会では、物理の授業について、発表することになっています。先日の広島大で行われたサイエンスカフェ(http://home.hiroshima-u.ac.jp/sciyugo/scicafe/scicafe-record.html)で、それに関連したヒントがあったので、書こうとおもってたのですが、その前にちょっと気になることがありました。それを先に、、

日本人は英語が苦手ということをよく聞きます。確かに留学生のための英語のテスト、TOEFLの得点で、日本はアジアの国の中で最下位に近いようです。( http://english-columns.weblio.jp/?p=195) 「これはいけない、英語教育に問題がある」ということを、耳にすることもあります。
これ、どうなのでしょう? なぜTOEFLがの得点が低いのでしょうか? そもそもそれは、いけないことなのでしょうか?

どうして日本人の多くが、英語を苦手としているか?もちろん英語と日本語は全く異なる言語、ということがありますが、根本的なところは「必要ないから」では、ないでしょうか。日本は世界有数の先進国です。いろいろな問題を抱えていますが、世界的にみれば、とても高い生活レベルでしょう。忘れてはならないのは、こんなに安全に暮らすことができる国は、まずないということです。小中学生が、一人で電車やバスに乗っている国は、滅多にありません。(正確で安全な公共交通機関と、町の治安の、両方そろっていないといけないのですから)

日本国内にいれば、世界有数の生活ができる環境で、なぜ外国語が必要なのでしょうか。海外旅行? 多くの人にとって、一生のうち数回の海外旅行のために、英語を学ぶ必要があるでしょうか? 私は、日本人の多くの人が英語ができない理由は、「必要ないから」だと思うのです。もう少し正確にいうと、「生活する上で必要ないから」だと思います。

しかし、コミュニケーション技術の発達もあって、世界はどんどん狭くなっています。仕事(すなわち生活)に英語が必要人の数は、以前に比べて、はるかに増えているでしょう。今後もますます増えると思います。英語が「必要になる」のです。でも決して、日本人全員では無い。

大事なことがあります。英語を学ぶのは、外国の方と意志の疎通をするためです。英語はそのための技術ですが、技術だけではありません。人と話すとき、相手の考え方や人となりを考えることを抜きにして、会話は成り立ちはません。言葉を学ぶということは、単なる技術では終わらないのです。技術としての英語が、達者なことに越したことはありません。でもそれはほんの始まりです。外国の方と話すというのは、生まれも育ちも宗教も全く異なる人と付き合うことを、意味します。異文化コミュニケーションです。それは、日本固有の文化背景で生まれ育った人にとって、幸せなことでは無い、かもしれないのです。私は若い頃、4年ほどアメリカで暮らしていました。日本に帰ってきた理由はいくつもありますが、その一つに、アメリカ文化の中で一生暮らしている自分が想像できなかった、ということが間違いなくあります。

ですので私は、「日本人が英語を苦手にしている、何とかしなければ」ということが、「日本人全員が英語を習得し、平均点を上げなければならない」、ということであれば、ちょっと違うと考えています。英語を必要とする人の数は、今後もますます増えるでしょう。その時に必要なのはまず自己だと思います。グローバリゼーション イコール 英語、ではない。そして、日本人の皆が英語を必要としている、のではない。その結果、英語の平均点がよくないのは、悲観すべきことではない、と思うのです。