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2019年7月20日土曜日
科学コミュニケーションーII 科学とか科学者とか
前回,科学コミュニケーションについて考えてみました。
そこでは,
コミュニケーションとは
「目的をもって他人に対して行う情報の授受」
科学コミュニケーションは,
「科学者または科学が関与するコミュニケーション」
と考えました。
コミュニケーションというのは,誰かが特定の目的をもって特定の対象に対して行う政策の一種。科学コミュニケーションというのは,話題が科学に関することだったり,当事者が科学者だったりする場合のコミュニケーションという意味です。
今回は「科学」をテーマとするときの特徴を考えたいと思います。
内容的には先日の人は科学が苦手?(読書感想文)に書いたこととかなり重なります。
科学コミュニケーションの重要さが話題になる背景には,科学の発展によって,科学の社会への影響が大きくなったことがあります。そのときに,科学や科学者が関与するコミュニケーションに特有の課題が浮き彫りになるのは必然ではないでしょうか。
科学に限りませんが,ある分野にはその分野の手法(作法といっても良いかもしれません)があります。その分野の専門家になるためには専門のトレーニングが必要です。科学の場合,物事をできる限り客観的に考察し評価することが特徴です。これを行うようにトレーニンされてきた科学者は,その思考や行動にも客観的な指標を重視する傾向があります。一方で,科学者以外の人の行動基準は,主観が大きな比重をしめる傾向があります。このことが,科学コミュニケーションを難しくしている理由の一つではないでしょうか。(科学者が客観的な判断で行動するかという事も甚だ疑問ですが,少なくともそのような振りをします。) 科学者というのは世間一般からみると,ごく一部の少数です。科学者自身が,これを認識することがまず重要だと思います。
科学者や科学の特徴とそれを踏まえた科学コミュニケーションを考えてみたいと思います。
科学と社会
科学とは一言でいうと,「自然現象をできる限り客観的に記述する」ことだと思います。客観的に記述する言語は究極的には数学です。
重要なことは,「客観的に記述する」行為には,社会的意義を考えることは含まれていないことです。科学自体はその意義や意味には無関係です。それを考えるのは,社会科学です。(社会科学には,人文,政治,宗教なども広く含むと考えてください。)学問の分野を分けるというのは好ましくありませんし,科学の意義を考える学問分野はすでに存在します。しかし,科学の本質を考えたときに,その中に科学の意義の考察は含まれないということは言えのではないでしょうか。
科学者も同様です。科学者になるためのトレーニングは,物事を客観的に考察し評価するための訓練がそのほとんどです。科学倫理など,その意味考えることも特に最近は重要視されてきましたが,どちらかというと派生的なものです。
科学者にも研究の意義や社会に与える重要性を考え,行動している人は,たくさんいます。しかし,その行動は科学を探求する研究者というよりも,社会を構成するもの一人としての行動ではないでしょうか。つまり,科学の意義や社会的意義を考えるとき,その人は科学者というよりも,一般社会の構成員としての立場で活動していると思います。問題は,にもかかわらずそれを科学者の作法で行っていること,だと思います。
科学コミュニケーションの基本的な考え方
まず,科学者自身が,科学者になるためにうけてきたトレーニングは非常に特殊なものであること,科学的(客観的)なことを行動原理にすることは人の活動そしては一般的でないこと,をしっかりと認識することだが大切だと思います。
人類(ホモ・サピエンス)20万年の歴史のなかで,科学的な思考が本格的に芽生えてから,たかだか数百年です。人は主観で行動する動物なのです。
コミュニケーションを通じてなにか目的を達成しようとするとき,科学的・客観的な情報提供は必要条件になることはあっても,決して十分条件にはなりません。逆に,主観は科学的な裏付けがなくても人行動の十分条件になり得ることは,歴史をみればあきらかです。
科学コミュニケーションも例外ではありません。科学コミュニケーションに関する文献をみると,いろいろなカテゴリー分けやモデル化が書かれています。それはすべて,科学や科学者の特徴を考慮し,コミュニケーションによって目的を達成するための,戦術であり戦略ということだと思います。
次回は科学コミュニケーションの参加者について考えてみます。
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