2019年7月16日火曜日

科学コミュニケーションI その定義について

ブログのタイトル変えました。意味はありません。
スマートスピーカーに一番良く話しかける言葉です。カップラーメンには一番便利ですね。

この4月から,科学コミュニケーター養成プログラムを有志と始めました。ほぼ2週間おきに受講生諸氏といろいろ話しています。受講生の皆さんには,サイエンスカフェの企画から実施までを実習としてやってもらっています。受講生のみなさんにはいつも,「目的と趣旨とはっきりさせてください。迷ったら,もとに戻る。この授業の場合は,科学コミュニケーションですね。」と言っています。でも科学コミュニケーションって何かと問われると,一言で答えることができません。今更ながら考えてみました。

コミュニケーションって何?
 コミュニケーションとはなんでしょうか? 狭い意味では,情報の伝達やりとりですが,わざわざコミュニケーションと言っています。そのときは,ある人から他の人への一方的な情報伝達ではなく,他方からの反応を含んでいます。
AさんからBさんへ何かを伝えたとき,Bさんが何か反応を返します。好意かもしれまん。反発かもしれません,情動的なこともあるでしょう。コミュニケーションというときは,このような,何かのやり取りを想定しています。
コミュニケーションには必ず目的があります。例えば,AさんはBさんと友達になりたい,服従させたい,何か情報を得たい(得る目的は別にあるはずですが)などです。意識していなくても何か目的があります。

結局,コミュニケーションというのは,「ある人やグループが目的を持って他人や他グループに対して行う情報の授受」ではないでしょうか。情報の授受とあえて書いたのは,物理的な暴力ではないと言う意味です。

このコミュニケーションの考え方は,クラウゼヴィッツの「戦争論」に通じるところがあります。戦争論では,戦争を「政策の道具,交渉の延長線上にある」と捉えています。コミュニケーションも同様に考えることができます。暴力による交渉が戦争であり,情報の授受による交渉がコミュニケーションと言うわけです。コミュニケーションが,情報の一方的伝達ではなりたたないことが自明になったのではないでしょうか。科学コミュニケーションに関していうと,一生懸命理論を説明するだけでは不十分だということです。このことをはっきりするさせるのが,わざわざ「コミュニケーションとは何か」考えた理由です。
政策交渉について,相手との関係(横軸)と方法(縦軸)の2次元上に表したものです。
コミュニケーションも戦争も政策交渉の道具という意味では同じですが,この図の対極にあります。



科学コミュニケーションとは
コミュニケーションを,「目的をもって他人に対して行う情報の授受」,と考えると,科学コミュニケーションは,「科学者または科学が関与するコミュニケーション」と考えることができます。とっても簡単な話になりました。

 通常,科学コミュニケ−ションというとき,科学者が情報の送り手,公衆が受け手の場合を考える場合が多いのですが,いつもそうとは限りません。情報の受け手が科学者の場合もあります。公衆と言っても,立場,考え方,科学的知識の有無は千差万別です。科学(に限らず)コミュニケーションを行うときは,相手(ターゲット)を想定することが重要です。 情報の送り手,受け手も,どちらがどちらと決まっているとは限りません。公衆から科学者へ向けたコミュニケーションや,どちらからどちらとは言えない場合もあるのです。(これについてはまた別の機会に考えます。)

科学コミュニケーションというのは,
1)科学者から他の集団に向けた,特定の目的をもった情報の授受
   (科学者による講演やサイエンスカフェなどのイベントはこれ。)
もっと広義には,
2)科学者を含む集団間の,特定の目的をもった情報の授受
   (科学者間や科学者と公衆の討論会などはこちら)
ということでしょう。一般には1)を指す場合が多いと思います。

 科学コミュニケーションというと,科学者と一般の人との対話とか,啓蒙とか,なんとなく分かったような分からない言い方をすることが多いのですが,このように考えると,何をしようとしているのかスッキリすると思うのですがいかがでしょう。

ただし,科学コミュニケーションは,とりあつかう題材が科学であること,科学者が介在することによる,特有の難しさや課題があります。
これを考えるためには,まず,科学の特徴とはなにか,それを研究する科学者とはどんな人かを考察する必要があるように思えます。

科学コミュニケーターとは
ここまでの話にはか科学コミュニケーターは出てきません。科学コミュニケーターは,科学者でも,公衆でもなく,その中間にいます。メディアといえばよいでしょうか。
これについては,別の機会に考えてみたいとおもいます。

次回は,科学コミュニケーションはに科学が介在すること特有の課題を考えます。




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