2019年7月22日月曜日

科学コミュニケーションの参加者


科学コミュニケーションの当事者

前々回は科学コミュニケーションとな何かについて
前回はその特徴について考えた。
今回は,科学コミュニケーションの参加する当事者について考えたい。


当事者のなかで,メディアはその立場が他者と異なっており,後で議論する。

 科学コミュニケーションに関与する当事者と当事者間のコミュニケーションについて表にまとめた現代の事例から学ぶ サイエンスコミュニケーション ISBN 978-4-7664-2203-0 p14を参考,筆者による改変)
 当事者はもっと詳細な分け方も可能だが,科学者と公衆のみを考えている。政策作成者は,コミュニケーションの手法としては,科学者と類似の方法をとることができると言う意味で,同様のカテゴリーと考えている。


表:科学コミュニケーションの当事者と当事者間で行うコミュニケーション



実施者


科学者
肯定的
公衆
無関心な
公衆
否定的
公衆
一般的な
公衆
対象
科学者
委員会


公聴会
ネガティブ
キャンペーン

肯定的公衆
講演会
市民討論会
サイエンスカフェ
パブコメ
(アンケート)
講演会

ネガティブ
キャンペーン

無関心な公衆
(マスメディアを通じた宣伝)

ネガティブ
キャンペーン

否定的公衆
公聴会




一般的な公衆
講演会
市民討論会
サイエンスカフェ
パブコメ
(アンケート)
博物館


ネガティブ
キャンペーン


 表のなかで,問題となるのが空白の部分である。一般に公衆がコミュニケーションの実施側になることは少ないが,科学者側からみた場合,無関心な公衆に対する部分が課題である。ここにアプローチする方法として,マスメディアを通じた宣伝が考えられるが,莫大な費用がかかることからこれまでに行われたことはない。また,前例がないことから,この是非自体も議論となると考えられる。人口に占める割合としては,無関心な公衆が多数を占めることは十分に予想されるため,この点は大きな課題である。また否定的公衆に対して行えることが少ないことも課題である。


メディアについて

 メディアはコミュニケーションの実施者と対象の間で両者の間を取り持つ役を果たす。しがって表の中に直接出ていないが,情報を介在するものとして介入する。メディアとしては,マスメディアが代表的だが,コミュニケーターや博物館学芸員もこの役を担うことがある。またインターネットの発達はコミュニケーションの手法に大きな変化を起こしている。



マスメディア

 テレビ,ラジオ,新聞,出版社などが代表的な媒体だが,通信社のように情報をテレビ局や新聞社のような媒体に提供するメディアもある。マスメディアによるコミュニケーションは基本的に情報の提供者からの一方通行である。



 マスメディアがコミュニケーションに関わる目的は何だろうか?これは,メディアが報道するニュースの選択とも関わる。マスメディアの公衆に対する影響の大きさを考えると、大きな論点と考えられる。



マスメディア自身が情報発信を行う場合

 マスメディアは基本的に営利企業であり、配信した情報が公衆の興味と合致し、受け入れられることが重要である。したがって情報の選択もその指針によって選択される。何か日常的でない出来事や流行にそった情報などである。この場合,マスメディアが独自の考え方で情報を選択し伝えるため,その意図は情報を伝えるメディアの意向を反映する。伝える内容を専門的なトレーニングを受けていないものが作成する場合も多く、科学コミュニケーションの場合、情報の正確性や客観性が問題となることがある。

マスメディアが専門家と公衆の間を仲介する場合。
 科学者などがコミュニケーションを行う際に,メディアを通じて行うことがある。記者会見が代表的なものである。情報の発信者はある目的をもってメディアに伝える。(目的を明確にすることは重要な前提である。これが無いと会見等を行っても、メディアから無視されることになる。)しかし、情報の発信を行うかどうかも含めて、情報発信者の主体はメディアとなることに注意しなければならない。メディアに対して発信者側の意図が正しく伝わるか,たとえ伝わったとしても意図の通りに報道されるかは報道されるまで分からない。
  情報発信側はこの事を十分に考慮し、定期的な勉強会を通じた情報提供やメディアトレーニングの実施、メディアにとって発信しやすい内容の選択など、その目的を達成するための方策を検討し、実施する必要がある。

 マスメディアの場合、情報の発信者がメディアであっても、科学者であっても、最終的な情報発信には、メディアによる解釈やその意向が介入する。誰が何の目的でコミュニケーションを図ろうとしているのか?その目的を反映したものなっているのかが,曖昧になることがある。メディアによるコミュニケーションには,場合毎に応じた考察が必要である

コミュニケーター
 コミュニケーターは,専門家と公衆の間に入り,情報の内容を理解しそれを伝えることを役割とする。専門職としてのコミュニケーターがあるということではなく,イベントの企画者,博物館学芸員などがその役割を担うことが多い。また,マスメディアの中にもその役目を担うものがいる場合がある。

 科学コミュニケーターはコミュニケーションの技術や知識に疎い科学者と,科学的素養が十分ではない一般公衆の間で,コミュニケーションをとりもち,その目的を達成させることを役目とする。そのため,科学に対する理解(必ずしも専門知識を意味しない)とコミュニケーション技術を兼ね備える必要がある。また,サイエンスカフェなどのイベントを開催する場合には,その企画立案から実施までを取り仕切ることもあり,科学コミュニケーション全般にかかる幅広い知識が必要とされる。

  科学コミュニケーターの場合もメディアと同様に,コミュニケーター自身が情報発信する場合と,専門家と公衆の間を仲介する場合がある。

 科学コミュニケーター自身が情報発信する場合,その目的は科学的知識の普及,科学の社会への理解促進など,科学と社会の関係促進をその理念とする場合が多く,経済的な利潤を追求する場面は少ない。その一方で,サイエンスカフェなどの具体的なイベントを行う場合,「科学の社会への理解」などの目的が抽象的にすぎ,イベントの目的や対象が曖昧になってしまう場合がある。

 科学コミュニケータが科学者と公衆の仲介を行う場合は,マスメディアの場合と異なり,科学者の意図や目的は比較的反映されやすい。一方,専門的内容や情報の正確性にこだわる傾向のある科学者・専門家と入念に打合せを行い,当初の目的を達成するべく,事前の打合せや,イベントの構成を行う必要がある。そこにコミュニケーターとしての技能があると言っても良い。

インターネット
 インターネット自体は純粋なメディアであり,情報の発信者にはならないという意味でマスメディアやコミュニケーターとは一線を画す。組織の大小や地域に制限されずに情報を発信できるメディアであり,その方法もweb,SNSなど多様な広がりをもっている。大きな影響をもつメディアとなっている反面,フェイクニュースや炎上という言葉に代表されるように,情報の真偽,過剰な反響などが問題になっている。


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