2015年3月8日日曜日

未来エネルギーフォーラムシンポジウム

3月2日に早稲田大学で
第11回未来エネルギーフォーラムシンポジウム
 ― 国際リニアコライダー(ILC)計画のもたらすもの ― 
が開催されました。
このフォーラムはその名の通り、未来のエネルギーについてのフォーラムで、開催11回を数えるというとても活発な活動です。
今回はILCに焦点を当てるという、未来エネルギーという観点からは少し異色とも思える題目ですが、中身を見ると決してそうではありません。ILCという基礎物理学の研究計画と産業界や社会の関わりを再認識する機会となりました。産業との関係ということで、先端加速器科学技術推進協議会(AAA)と共催する事になり、私はAAAの広報部会員の立場で企画に関わりました。
 当日は前日までの曇天とうって変わって好天に恵まれ、春を実感する気候でした。それは良いのですが、花粉の季節の始まりでもあります。会う人毎にその話題。花粉はすっかり季節の挨拶になりましたね。

シンポジウムの前半は講演が3つ。
 まず東京大学の駒宮幸男さんによるILCの物理と計画の状況の話。駒宮さんは前日の夜にアメリカ(ILCの重要な会議)から戻られたばかりでしたが、その疲れも感じさせず、いつものように歯切れの良い話を聞かせてくれました。

 その次は、日本創生会議の増田寛也さんによる、ILCと地方創生の関わりについての講演でした。このような話題は知識として聞いたことがあっても、具体的な話を聞く機会はあまりません。ましてやそれがILCとどうかかわるか,地域創生や少子化との関連についてなどなど,私にとってはとても新鮮なお話でした。
 東京は他の地域に比べて出生率が低く,日本の人口の減少傾向をくいとめるには,地方を元気にすることが大切なこと。そのために,学校や病院など新しい施設を核とした地方都市の創成が重要だと言うことです。ILCができたら国際研究都市としてその核となることができるでしょう。基礎科学の研究がこんな形でも社会の役に立つことができる。ILCはそんな大きな構想だと言うことを改めて考えされされました。

 3番目は日本アイソトープ協会の柴田德思さんによる,加速器(放射線)が生活に果す役割についてでした。実は柴田さんは私が担当している授業に来ていただいてお話をして頂いたことがあります。その時のお話がとても興味深く,今回の計画を考えているときに直ぐにお名前が浮かびました。お話の内容は,工業,農業,医療の分野でその様に加速器,放射線が浸透しているかについて実例や経済規模も交えてお話下さいました。街を走っている車のタイヤの多くが放射線処理で強化されているって,ご存じでしたか?



 後半は,産業界と加速器や検出器の関わりを,実際に業務携わっている方からその最前線のことを話していただきました。私は司会を務めました。ILCと深く関わる超伝導加速器や電子管の開発,MRI設備として医療現場には欠かせない超伝導電磁石の話,そして私のような素粒子実験に携わるものにとっては加速器以上に身近な測定器開発のこと。短い時間でしたが,どの講演もとても興味深いものでした。私は加速器科学の技術が実生活にも深く関わっていることをよく講義や講演会で紹介します。今回そのお話を現場の方から直接聞くことができて,次に話をする機会にはもっともっと力強く話すことができそうです。

夕刻からは懇親会。シンポジウムに参加された250人のほとんどが出席され,とても賑やかに会になりました。このような場での情報交換もとても有益ですね。予定の2時間があっという間にすぎました。


 ILCの講演会というと物理や加速器,測定器に関することが多いのですが,今回は産業や地方創生という社会との関わりに焦点を当てたものでした。その広がりの大きさを改めて実感するよい機会でした。ある方は,(もちろん冗談だと思いますが)ILCの意義というのは物理とかとんな些末な(??)ものではなく,実社会に多く換言する実産業なのだと言っています。
あながち冗談でもないかも。。。


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