地上で重りと羽を同時に落下させたら,重りが直ぐに落下して,羽はひらひらとゆっくり落ちます。これは地球上の空気抵抗のせいです。もし空気がなければ重たい物も,軽い物も同じように落下することが知られています。中学校の理科で習うでしょうか。ガリレオがピサの斜塔から物を落として実験したというこことでも有名です。
現代版の実験の様子がここにあります。
(長いので結果だけなら2分40秒くらいから)
地球上で物体がうける力,即ち重力は
質量×重力加速度
と書くことができます。重力加速度というのはいわゆるgで,決まった値(常数)です。重力は重たい物ほど強く働くということを表しています。
一方,高校でニュートンの運動方程式というのを習います。
力=質量×加速度 (F=maと言うやつ)
力が大きいと加速度が大きくなる。同じ力でも質量が大きいと加速度は小さい(動きにくい)ということを式で表しています。
これとニュートンの運動方程式を合わせると
質量×加速度=質量×重力加速度
となります。これが地球上で物を落とした時の振る舞いを表す式です。
両辺に同じ質量があるので,地球上では
加速度=重力加速度
つまり,どんな質量の物体も落下の加速度はgになります。
地上ではどんな質量のものでも同時に落ちることを証明したことになります。
ところが,です。
地球上で物体が受ける重力
質量×重力加速度
にでてくる質量と,ニュートンの運動方程式
力=質量×加速度
にでてくる質量は同じものでしょうか。
重力にでてくる質量は重力という作用によって物が引っ張られるときに現れるもの,重力質量と呼びましょう。ニュートンの運動方程式にでてくる質量は物体の動きにくさを表すもの,慣性質量と呼ばれます。こう考えると,同じ質量でも両者は異なる意味を持っています。言い換えると,重力質量と慣性質量が同じであるという理由はどこにもないのです。
なので,厳密には地球上での物体の落下を表す式は
重力質量×重力加速度(g)=慣性質量×加速度
です。こう考えていくと,ガリレオが実験で示した,重たい物も軽い物も落下の加速度は同じ,というのは,重力質量と慣性質量が等しいことを証明したという意味になるのです。ガリレオの時代の実験精度はそれほど良い物ではありませんが,今ではこのことは非常に高い精度で確かめられています。しかし,両者が等しいことを理論的に導くことはできないのです。あくまでやってみたら等しかった,という話です。
ここでアインシュタインの登場です。アインシュタインは重力質量と慣性質量が等しいと言うことを原理として採用しました。つまり
重力質量=慣性質量
は正しいと「仮定」したのです。これは,「等価原理」とよばれ,一般相対性理論のもとになった考え方です。アインシュタインが生涯で最も大きな思いつきといったくらい重要なものです。(アインシュタインはもう少し厳密な言い方をしていますが,,)
次週3月4日の重力茶会では,等価原理がなぜ重要というあたりから,重力について話を始めてみたいと考えていますが。いかが?
殆どの本で概ね同じように書かれていますが、アインシュタインの人生最大の思いつきは違います。自由落下中の物体には重力が消えている、ことに気がついたと彼は述べています。ニュートンの万有引力と言う力はないことに気がついたのです。あるのは重力加速度運動だけです。この加速度に質量を乗じたものは見かけの力であっても実際の力ではありません。この加速度運動を阻害すると慣性力が現れます。これが重さです。詳しくはリスク・確率・重力で検索してみてください。
返信削除ご指摘ありがとうございます。人生最大の思いつきというのは,,おっしゃるとおり,「重力中の一点においては適当な座標変換によって重力を打ち消すことができる。」ことを指すようです。これを等価原理というのが,一般的いみですが,このブログの記述はそうはみえませんね。(ブログの最後に書いてある,茶会では,思いつきを正しく話したつもりです(と記憶しています))
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