2023年5月9日火曜日

新型コロナから3年。教員の視点,親の視点

 

202358日,新型コロナウイルスが第5類となりました。インフルエンザなど同じ扱いになったのです。 新型コロナウイルスの流行の始まりから約3年が過ぎました。この機会に当時,2020年春のことを書いておこうと思います。

 

 新型コロナウイルスのことが気になり始めたのは2020年明けてすぐのことでした 1月は ニュースを聞きながらもまだそれほど大きな影響を及ぼすとは思えず,まさか4月以降の生活が一変するとは思ってもいませんでした。 でも2月になるとなんとなく様子が決まって違ってきました。当時のFacebookを「ぞくぞくと研究会中止の連絡が入ってくる」と投稿しています。もしかしたら4月から大学の授業が大きく変わるかもしれないと考え始めたのもこのころです。

しかしそのころは,新年度のことを検討しておかなければならないと思いながらも一方で「影響があるにしても4月になると大学には新入生が入学し研究室には新しい4年生が来て,ほぼ通常通りの活動ができるのではないか」そんなことを考えてみました。」

 

  一方私生活ではちょうど 娘が大学入学の年でした。 3月の初めに幸運なことに合格通知を受け,新しい生活の準備をしていました。 2020年の3月の初めの頃のことです。近くの家具屋さん電気屋さんに行って新しい家具や電気製品の購入,その配送の手配をしていました。 その頃はすでに4月から本当に新しい場所での生活ができるかどうか疑問も浮かんでいたのですが,手配はしておかなければいけない。 まあ結局引っ越しはすることになるのだろう,,そう考えていたのも事実です。

 大学の話に戻ります 2月の下旬になってくるとFacebookの投稿にもコロナのことが突然増えています。出席を予定していた5月のフランスでの研究会からも中止の連絡が来ました。4月からは学生が通学しての授業ができなくなる可能性も考え始めました。

 もしそうなった時にどうなるのか それについて検討を始めなければいけない頃ではないか?周りの人と そろそろ 検討しなければいけないねということをやり取りしていました。

大学の教育情報化推進会議の方に検討の提案をしてみたりもしました。しかし私から見ると十分な検討が始まっていると思えず。いらいらしながら大学の状況を見ていました。数年前まではeラーニング推進会議という大学の中ICTの活用を考える会議の議長をしていたので,もしその会議が続いたら何かそこで提案できたのに,,,なんて考えていました。

2020312日のFacebook投稿です,

4月からの授業形式がまだ決まっていない。特に自宅外の新入生は引っ越してきたが良いが,授業は無い,あってもオンラインのみ,サークルもないでは,精神的に持たない。対面で授業ができない時は,自宅などこれまでの環境を維持するように通達しないと,大変なことになるのではないか」

「一昨年の水害の対応。H大学はかなり素早くて評価していたのだが,,,」

かなりいらいらしていますね。。

そうこうするうちに3月中旬になってようやく新型コロナウイルスの中での授業を検討する学内のタスクフォースが立ち上がりわたくしもそのメンバーとして終わることになりました。

当初大学はリモート出身の授業するにしても1週間くらい遅れて授業医を始められるそのようなことを考えていたようです。しかし実際のところはそんな簡単ではありません。遠隔授業を行うには学生に学生の下宿アパートまた自宅インターネットの充分な環境が整っているかそのようなことも考えなければいけません。

 それよりも何よりも教員がそのやり方を知らないのです。もちろん遠隔会議システムだけではできません。いわゆるLearning Management System (LMS)という,教材を置いて受講生と共有したり,小テストのようなことを行ったり,成績を集計したりするシステムを使わないと遠隔だけの授業はできません。率直なところそのシステムを使ったことがある教員非常に少数だったのです。

広島大学ではBb9というLMSを使っていたのですが,その使いかたを教員に学んでもらわなければなりません。4月に入ってようなく理学部の教員向けの講習会が開催されました。 でも,その時に来てくれた講師の人は,いきなり「こういう機能ある」とか,「練習問題こういうふうにつくる」とか,そのようなことを話し始めました 。ところがそれを聞いてる教員はチンプンカンプンです。そもそもLMSが何なのか全く知らない。ログインしたらどんな画面が出てくるのか?その出てくる画面の意味はそもそも何なのか?そんなことをまったく知らないのですから,中身の説明なんて理解できるはずがありません。 その会合が終わった後,慌てて物理学科の教員の方々にもう一度集まっていただいて,Bb9基本の基から説明をしたのを覚えています。

 本学ではマイクロソフトのteamsと言うアプリを使っています。これはウェブ会議をしたり,授業の情報交換のための投稿をしたり,ファイルを置いたりと,さまざまな機能を持ったシステムです。それまではほとんど使われていなかったものなのですが,みなが使えるようにならなければいけない状況に追い込まれたわけです。そこで理学部で遠隔授業やコロナ対応の情報交換をするための理学部の教員向けチームをつくってそこで情報交換をすることにしました。Bb9の使い方,チームの作り方,録画のLMSのアップロード仕方などなど,いろいろな情報交換をして少しでも教員の授業の役に立つそういうことをやってみました。

 一方で2月,3月ころ,日本語を解さない外国から来た教員の皆さんへの情報が全く不足していることを伝え聞きました。3月のFacebook投稿に「ここはSGUではなかったのか」というのがありました(^^。コロナの影響で授業がどのようになるのか,どうすればいいのか,そのような情報がほとんど外国人教員の方には伝わっていないということがわかりました。そこで外国人教員の皆さんを対象にした情報交換のチームを立ち上げて,大学から日本語で出ているいろいろなアナウンスメントの説明をしたり,遠隔授業の情報を伝えたりしました。少しは皆さんの役に立てたのではないかと思っています。大学からの情報が英語で提供されるようになり、情報提供という役目はほぼ終了しましたが、そのチームは現在でも情報交換を行っていいます。

 新入生を迎えるのも大変でした。新入生がネット環境で授業を受けるためには大学のアカウントを取得して,そこにアクセスできるようにしなければなりません。本学では必携パソコンといって,学生全員が自分のパソコンを持つことになっているのですが,そのパソコンをまず入手しセットアップしてネットから学内のリソースにアクセスできるようできるようにしなければなりません。それをどうするのか大きな課題でした 。幸運なことにたった一日ですが,4月に入って新入生向けのガイダンスを対面で行うことができました。その一日を使って新入生の皆さんにこれからの授業のこと,遠隔授業のこと,などの説明をおこないました。いまでもそのときのことをよく覚えています。

 私自身も大学の新入生の保護者でした。新入生の抱く不安,その保護者が持っている不安,とてもよくわかりました。新入生ガイダンスで「皆さんが最も安心して安全で完全に授業を受けられる場所から授業を受けてください」そう強く言ったのを覚えています

個人的は,遠隔授業やBb9を使った授業をずいぶん前から行っていたので,実は遠隔授業の実施にそれほどの負担はなかったのです。率直に言うとやり方はよく知っていました。でも大半の教員はそうではありません。「授業を録画してそれをBb9にアップロードして見ることができるようにせよ」そう言われても大変なのです。皆さん大変苦労したと思います・なんとか乗り切らなければいけない。その思いで授業を始めたのはもう5月連休が過ぎていたでしょうか。

筆者の居室からの遠隔授業のセット

 個人的な面をお話しましょう。娘が大学一年生になりました。でも対面授業は全くありません。アパートを借りたものの引っ越しは延期。家財道具一式は電気屋さんや家具屋さんの倉庫に一時取り置きになってしまいました。娘は大学から遠隔授業の受け方や大学のアカウントの取得方法,ログインの仕方などを大学からの情報で習得する必要がありました。入学してから半年間,一度も大学に行きませんでした。アパートを決めるときに大学の近くまで行ったのですが,その時にはもうキャンパスは立ち入り禁止。大学に行ったのは入学試験の時だけという状況でした。 入学後半年間,自宅から遠隔授業を受け続けるということになりました。おかげで私も少しだけ他大学の遠隔授業の様子を見ることができました。

 想像していたことですが,遠隔授業のやり方は教員によって大きく違います。慣れている人,慣れていなくてもこういうものに強い人,一方でIT系には全く弱い人,いろいろな教員がいます。他人事ではありません。本学も似たり寄ったりのはずです。提供する授業の質の担保ということ考え続けることになりました。結局娘は,入学後半年経ってから大学近くのアパートに引越しました。半年間家賃だけを払い続けていたのです。でも授業の大半は遠隔授業,実験などどうしても対面で必要なときだけ,たぶん週に一日通学する程度。そのようなことが続いていたようです。サークル活動もほとんどできません。なんとかリモートでサークルに参加しミーティングだけ行われていたようです。でもサークルやクラブ活動というのは対面でみんなが集まってやることが基本。それが楽しいわけです。それができない学生は全国(いや全世界)にいる。授業だけでなく,影響は非常に大きいことを実感していました。

 教員としてはできることはやっている。そのために大きな努力を払ってそのことは知っていました。一方で保護者としては,「それ以前の授業とは違う」「大学生活ができることが全く違っている」というのが率直な思いでした。保護者の立場から言えば授業料を返してほしいと言いたくなるような気持ちが無かったとは言えません。

 その後,今に至るまでいろんなことがありました。2023年の5月,ほぼ通常の社会生活となって大学もほぼ通常の授業の体制に戻りました。2020年の4月に入学した新入生はもう4年生になっています。最終年度です。この3年間かどういう学生生活だったのかとても気になります。最後の学年,大学生として充実した活動をして,少しでも有意義な大学生生活だったと感じて卒業してもらいたいと思っています。

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